March 30, 2007
道徳を教科に
例の教育再生会議が，また面白いことを言い出した。「道徳を正式教科に」と言うのだ。この表現は新聞が勝手に使った表現なのだろうか，「正式教科」っていう表現は。これでは，なんだか今までは「正式」ではなかったみたいではないか。この言い方自体が，すでに道徳を軽視しているように思うのだけど……。
現行の指導要領では，学校で教育する内容が３つの領域に分かれている。それが，「教科」「道徳」「特別活動」だ。今は，道徳は他の国社数理……という教科が束になったのと同じ扱いなのだ。それを，教科の中の１つにしてしまおうと言うのだ。
ま，それはいいのだ。道徳を教科にしようという発想は，実は納得できないわけではない。
ただ，道徳を教科にすると，いろいろ問題が出てくるんじゃないだろうか。
新聞にも書いてあったのは，道徳が戦前の「修身」と同じになってしまうのではないかということ。戦前の日本はこれで子どもたちを軍国主義に洗脳したわけで，またそんな方向に行ってしまう危険はないかという懸念がある。私個人としては，そりゃ考えすぎじゃないの？という気もするのだけど。
もう１つは，教科になるからには国の検定を通った教科書を使い，さらに評価評定をしなくてはならなくなることだ。道徳（「徳育」という教科名にするらしいが）のように，心のありようを考える教科で，何をどうやって評価するのだろうか。道徳にも，「知識・理解」なんていう観点ができるのだろうか。道徳における「知識」って何だろう？そして，「道徳的な行動の技能」なんていう観点ができるのかな？「道徳的な思考」とう観点も必要だな。そして，一番最初にくる観点は「道徳に関する意欲・関心・態度」だな。きっと，書店には「期末テスト徹底攻略「道徳編」」なんていう本が並ぶんだろうな。
で，私が気になるのは，新聞には書いてないのだけど，免許をどうするかということ。小学校は基本的に全教科を教えられるからいいとして，中学校や高校はどうするのだろう？教科にするということは，その免許が必要になるんじゃないだろうか。
実際，今の指導要領から，高校では「情報」という教科が新設された。そのため，各高校では，コンピュータに堪能な教員が「情報」科の教員免許状をとらなくてはならなくなった。夏休みなどに，免許取得のための講習を大学に受けに行ったりしたらしい。「徳育（道徳）」だって同じだろう。「徳育」科の免許を取るために，各校の教員が何名かずつ，大学へ講習を受けに行って単位を取得しなくてはならないのだ。
で，その免許を持たない教員は，当然「徳育」の授業を行うことはできない。もし免許外で担当しなくてはならないのなら，必要な手続きをとらなくてはならない。
ということは，多くの中学・高校の教員は道徳をやらなくなるのだ。数学の先生がいるように道徳の先生がいて，週に１時間だけだろうけど，その先生が道徳の授業をやるのだ。学級担任が生徒の心を一番理解しているからなんて言ってもダメなのだ。学級担任が「徳育」科の免許を持っているわけではないのだから。
これって，考えすぎ？「徳育」科だけは，免許がなくても教えていいことにしちゃうのかな？
Comments
No comments yet
