December 29, 2011
がれき受け入れの難しさ
今朝の「朝ズバ」で，みのもんたさんが岩手県を現地取材したレポートをやっていた。震災から9ヶ月経つのに，まだ更地のようになったままの地域。そこに，がれきが山になっている。仮設住宅で一人暮らししているお年寄り。雪が舞うほどの寒さなのに，仮設住宅の床はカーペット敷だったのだそうだ。「4日前に畳が入った」と，お年寄りがおっしゃっていた。まるで，「朝ズバ」の取材があるから慌てて畳を入れたようなタイミング。涙なしでは見ていられなかった。
何かさせていただきたいと思うけれど，できることは限られている。
その限られた中にあるものの一つに，「がれき受け入れ」がある。
以前も書いたように，私としては「がれき受け入れ」には大賛成なのだが，冷静に状況を考えると，そう簡単な問題ではない。がれきや，それを焼却した灰から出る放射線を心配しているわけではない。おそらくそれは取り越し苦労の類いだろう。何でもかんでも持ってきて燃やそうという，無鉄砲な話ではないはずだ。
しかし，がれきを受け入れたために起こるであろう風評被害は，半端なものではないだろうと想像できる。
twitterなんかを見ていると，島田市は市長が「がれき受け入れ」の意思を表明しただけで，まだ実際に受け入れたわけではないのに，もう「島田市の物は買わない」などとつぶやいている人がいる。「なんと浅はかな短絡思考人間なんだろう」と呆れてしまうが，そういう人はけっこうたくさんいるのだろう。しかも，厄介なことに，そういう人たちは自分の感覚がおかしいことに気づいていないし，おそらく今後も気づくことはないのだろう。
これで，実際に島田市ががれきを受け入れ始めたら，例えば島田茶はほとんど売れなくなってしまうかもしれない。お茶の生産農家や販売店など，多くの人たちに大きな打撃を与えてしまうことになる。お茶だけではない，薔薇も，しいたけも，その他あらゆる農作物が売れなくなってしまうだろう。農作物だけでなく，工業製品も売れなくなってしまうかもしれない。
島田市だけでなく，島田市の大井川下流にある吉田町や旧大井川町も，同じ目に遭うかもしれない。吉田港に水揚げされたシラスも売れなくなってしまうのかもしれない。「シラスは大井川で泳いでいたわけではない」と叫んでも，短絡思考人間たちは聞こうとはしないだろう。大井川港に荷揚げされた石油も，売れなくなってしまうのだろうか。
「がれき受け入れ」の説明会で，「島田市のお茶は壊滅してしまいます」と発言した方がいらっしゃるが，それはその通りなのだろうなと思う。
がれきから出る放射線よりも，この問題の方がずっと深刻なのだろうと思う。
私のような仕事をしている者は，風評が広がっても，生活に大きなダメージを受けることはほとんどないだろう。だから，「みんなで少しずつ我慢して，東北のがれきを受け入れましょう」と，大声で言うのは心苦しい。
市長は，市は，県は，国は，この問題については，どの程度の想定をして，どのような対策を考えているのだろうか。私のような政治の素人でもこれぐらいは考えるのだから，きっと長年政治に携わってきた方々なら，もっと詳細に具体的に考えていらっしゃるに違いない。その対策を，具体的に示していただければ，「がれき受け入れ」も一歩前に進むのだろうと思う。
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